語源や種類

樺細工に使用される語源やサクラの種類

樺の語源と樹皮の特性

樺の語源は、古く万葉集の山部赤人の長歌にたどることができます。ここでは山桜を「かには(迦仁波)」と表現しています。また、江戸時代の図説百科事典『和漢三才図絵』には、樺を「加波又は加仁波」と呼び、樺と称するは山中単花桜の皮也と述べています。また一方、アイヌ語でも山桜の皮を「カリンパ」と発音し、その語源を探る手がかりの一つを提示しています。現在この二説中どちらをその源とするかの論議は未だ結論を得ていません。しかし、いずれこれらの言葉が現在使用されている「かば(樺)」に転訛したものと考えられています。

また、樺はその字面からして白樺を連想される向きも多いですが、角館では山桜の樹皮を原材料にして作った工芸品を樺細工と呼びます。では何故、この山桜の樹皮が細工物に使用されるようになったのでしょうか。これを説明するためには、桜が他の木にみられない特性を有していることを挙げねばなりません。それは、この外樹皮が外観的形態から平滑樹皮のリング状剥離型と分類され、つまりは皮が幾層にも堆積して剥がれにくい性質を持っているという点です。この独自性によって滑らかで強靱、深く渋い光沢、しかも湿気をさけ乾燥を防ぐという特質が生まれてくるのです。

これらの長所を利用した樺細工で、原料となる山桜はオオヤマザクラ・カスミザクラ・ヤマザクラの三種類が今まで確認されてきています。このように、樺は様々な利点を有していますが、これを経験的に知りえた古人は、道具の一部や全体に利用し、生活に豊かさを付け加えていったのだと思います。

樺細工原料として使用されているサクラの樹種

学名
オオヤマザクラ(大山桜)
別名
ベニヤマザクラ(紅山桜)、エゾヤマザクラ(蝦夷山桜)
樹種の特徴
平滑で横に長い皮目が目立つ
花の色・その他
花は淡紅色。かすかな芳香がある。若葉は赤褐色をおびる。樹皮は樺細工に使用される原料のなかで最も良質である。
オオヤマザクラ
学名
カスミザクラ(霞桜)
樹種の特徴
平滑で横並びの皮目が目立つ
花の色・その他
花は白色または微紅色で、若葉は赤みをおびず緑色。樹皮は樺細工に用いる。
カスミザクラ

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仙北市立角館樺細工伝承館